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アフロディーテ「ああ、平和だ」
真後ろの教皇宮からは始終怒声が聞こえるし、12宮より下では時折必殺技による破壊音と悲鳴と言う雑音が聞こえるが、12宮最後の双魚宮は平穏だった。
本日執務の当たっていないアフロディーテは、優雅にローズティーを飲みながら一時の平和を楽しんでいた。
アフロディーテ「まったく、聖闘士とはこれ程平和であっても問題を起こせるとはねぇ」
聖域内でも標高の高い位置に位置する双魚宮からは、聖域のほとんどが一望できる。
生き返ってはじめて自宮に戻った時には、痛ましい戦禍の跡が刻まれていたが、その傷も人の体が時期に回復するのと同じく癒えてきている。
まるで、13年前の黄金聖闘士全てが揃い、平穏なる時をを享受した奇跡の様な時間を思い出させるような、平穏。
辛い修行も、面白くない勉強もあったけれど、普通の子供と同じように笑って、怒って、幼くいられた時。
遠い日の思い出が、脳裏をゆっくりと過ぎていく。
同じ時として重なることはないけれど、あの奇跡のような時とよく似た、また新しい思い出が増えていくだろう。
そしてそれは、いつかまた戦場に出る自分を支える力になるだろう。
静かに風が深紅のバラを天へと巻き上げながら、吹き抜ける。